『お買い物』2004.08.18

 

―――八戒は野菜が好きだ。 だから八百屋には毎日のように行ってる。

「やっぱり、新鮮じゃないと、ですから」

―――当然八百屋のオバチャンとは顔見知りになっちまうわけで、オバチャンとしても、綺麗な顔して何時もニコニコしている野菜好きのオニイチャンが嫌いになる訳もなく、自然と店先での無駄話(俺的には、な)も多くなる訳で、

「今日のオススメはトマトだよ!おいしいよぉ」

―――買い物に付いて来た俺様は無意味で無駄な時間を今、二十分ほど過ごしたところ。 踏み消したタバコも6本目。

「じゃ、今日はトマトサラダにしようかな」

―――路地の向こうから大きな荷車を引いたオヤジが来た。 狭い路地だ。 俺は八戒の腰に手を回して引き寄せ、少し道を広く空けさせた。 笑顔のまま、八戒が俺をチラッと見る。

(これは好き・・・・・・ね。OK。)

「うち、明日休みだからね。」

「じゃあ明日の分も買っておかなきゃ、ですねぇ。」

―――腰に回した手を、さりげなくケツに伸ばす。 妙に晴れやかな笑顔で、八戒が俺を見た。

(あ、そう、これはNG?・・・・・・了解。)

―――俺は小さくバンザイをして降参をアピール。

 

―――笑顔の種類で感情を理解しろってのは、根本的に無理のあるハナシで、でも俺は何時の間にかそれが出来るようになっちまってた。 八戒と暮らし始めて一年とちょっと。 ・・・・・・必要に迫られると人間、ナントカなるもんで。

 

―――大体が、こんなに強情で我儘な奴はいねーと思う。

何時からそうなのかは知らねーけど、どうやら感情を顔に出さねー事に決めてるらしい。

なにしろ強情な奴だから、自分で決めたことは押し通すってぇワケで、その時の気分がまんま表情に出る事はまず無い。

・・・・・・・・・んだけどさぁ、実は感情の振幅が激しいくせに、そういうことをされると身近な人間は迷惑きわまりないワケさ。

慣れないうちは急に不機嫌な言動をし始めたり(笑顔のままで!)、部屋に籠っちまったりするのが、なんでなのか分らねーんで、かなり面食らった。 振り回されたと言って良い。 我儘もいいとこだと思わねぇ?

 

「悟浄、行きますよ」

―――八百屋は終わったらしい。 二日分の野菜の入った袋が、当然のように渡される。 勿論、抵抗せずにおとなしく受け取る。 ・・・・・・飼い馴らされてるなぁ、俺。

「次は肉屋か?」

「そおですね。サッサと済ませちゃいましょう。」

―――八戒は肉屋のオヤジが嫌いだ。

「よお、男前! ナンダナンダ野郎二人で肉なんざ買いに来んなよ! 早く飯作ってくれるイイ女見つけろよ、甲斐性なし!」

「豚バラの薄切り200グラムと卵を」

「あいよう! 毎度!」

―――ハレヤカな笑顔のまま、ここは三分で終わる。

「後は? どこ行く?」

「僕の用事は終わりですよ。悟浄は?」

「俺?」

「そおですよ。」

「俺は別に・・・・良いよ。」

「・・・・・だって、じゃ、どうして付いて来たんです? いつも、買い物なんか来ないのに。」

―――ぽおっとした顔。 これは素だな。 こういう顔を見つけるのが面白ぇんだよ。 可愛いし。

「何をニヤついてるんです? 気持ち悪いなあ。 用事がないなら帰りますか?」

―――おっと、顔に出ちまってた? やべえ。 こんなこと考えてんの分かったら、こいつ絶対怒る。

「なあ、ちょっと、一杯飲んでかねぇ?」

「ダメですよ、肉が悪くなっちゃいます!・・・・・・・・・それならそうと早めに言ってくれれば肉は後にしたのに・・・・・・・・・」

―――本気で困ってやがる。 

「そっか、・・・・・・・・・わり。」

「仕方ないですねぇ。・・・・・・じゃ、お酒買って帰りましょう。 僕、おつまみ作りますから。」

「おう、それでも良いよ。 飲もうぜ!」

―――と、何気に腰、抱いて引き寄せたりして。 さっき “好き” の笑顔だったし。

「ちょっ、悟浄! やめてください人前で、もう。」

―――おぅ、怒ってる。 これも素だな。 でも俺は離さない。 耳元で言った。

「もうすぐ一年経つな。 俺とこうなってから・・・さ」

「えっ?・・・・・・・・・そうですか?」

―――ん? 赤くなった。 かわいーじゃん、やっぱ、こいつ。

「俺がさ、カクテル作ってやろうか?」

「悟浄が? って言うか、離して下さい! いい加減に」

―――あ、逃げた。 でも、口だけ耳元に持ってって、

「八戒のアノ声とラムのカクテル。 蜂蜜入りの甘―いヤツ。 一晩かかるけど?」(※18禁)

「・・・・・・・・・!」

―――お、珍しー、真っ赤な八戒。・・・・・・・・・って、

「おい! どこ行くんだよ!」

―――うわー、返事ねぇ! 地雷踏んだかなぁ? でも、方向からして家に帰るンだろ? ・・・・・・だよな?

 

―――家に着くと笑顔の八戒が待っていた。 ・・・やばい笑顔だ。 肉と野菜を俺からもぎ取ると冷蔵庫にしまいながら、知らない奴が聞いたら “にこやか” に聞こえるに違いない声で、こいつは言った。

「悟浄、どういうつもりですかぁ? 衆人環視の中でのあの言動は?」

「二人っきりだったらOKなのかな? 八戒くん」

「そーゆー事じゃないでしょう。 はぐらかさないでくれます?」

―――やばい、かなりマジで怒ってる。 笑顔に凄みがあるぜ、おい! 俺は簡単に降参した。

「イヤ、だからさ、八戒と歩きたかったんだよ! 単に、俺は!」

「えっ?」

「そしたらお前があんまり可愛いからちょっとイジリたくなっちまったの!」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・だって最近、三蔵のバイトで出ることも無くて、二人で外、歩くことも無かっただろ? ほっときゃお前は、マイペースで生活楽しんじゃってるし、買い物付いてく位しか口実も無かったしさぁ! デートってヤツ?っぽい事したいなって・・・・・・マジで怒んなよ! ったく」

―――うわ、最高ヤバイ笑顔になってる。・・・・・・・・・俺、何か間違った? やっぱ

「・・・・・・可愛いのは悟浄じゃないですか。」

「へ?」

「あまぁいカクテル、作ってくれるんでしょう?」

「あ、はぁ。」

「美味しくなかったら、どうなるか分かってます?」

―――怖い、ますます。 意味わかんねーけど・・・・・・ダメだ。 

「・・・・・・・・・ハイ。 多分、分かってると思いまス・・・・・・」

―――俺、多分こいつに一生勝てねえ

「分かっていて言ってるなんて、いい度胸じゃないですか? ・・・・・・そういうとこ、子供みたいで可愛いですよ、悟浄。」

―――八戒の顔が急に目の前に来た。 あれ? 上機嫌の笑顔になってる。

―――KISS・・・・・・されちまった。 八戒からって初めてかも・・・・・・お、可愛い。 ちょっと照れてやがる。

「それならそうと、最初からちゃんと言ってくれれば、きちんとデートっぽい事できたのに・・・・・・・・・」

―――何だよ、そーゆー事かよ。 ・・・・・・思いっきりホッとして、あごに手をやり、ちょっと上を向かせる。 上気した頬が綺麗だ。 今度はこっちから唇を頂く。 思いっきりディープに

「・・・・・・んっ・・・・・・んぅ」

―――相変わらず敏感な奴。 作っちゃうぞお、お兄さんわぁ。 ・・・・・・一晩かけて、カクテル。

「八戒、蜂蜜って家にあったっけ?」

―――手早く胸をはだけさせ、首筋に唇を這わせる。

「ありますけど・・・・・・・・・あっ・・・」

「なんだ、ここにあんじゃん。 作り方、その@。 八戒の蜂蜜漬けを作る。」

―――耳たぶを甘く噛みながら、白い肌に蜂蜜をたらした。

「な・・・にを・・・悟・・・・・・じょお・・・・・・」

「そのA。 ラムを口に含む。」

―――そのまま肌の上で蜂蜜とラムを混ぜる。 舌をたっぷり使うのがポイント。

「は・・・・・・ごじょ・・・・・・!」

 

―――そうして、ラムの香りのするあまーいカクテルが出来上がったのは、日付が変わろうとする頃だった。・・・・・・とさ

 

 

はじめましてなので、おとなしめに。 (合わないと思ったら、捨ててください)

 

悟浄は八戒のやることなすこと可愛くて、八戒は悟浄といると安心しきっちゃってる・・・みたいなのが表現したかったのですが、出来てませんねえ。 ハイ、わかってます。 済みません。

 

どーでも良いんですが、どうも私が悟浄を書くと、 “歩く18禁” になりがちで。 嫌いじゃないだけに。

今度は八戒視点で何か書きたいと思います。

 
 


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